――――――――――――――――――――――――――――――――― 注:この話は、舞がちっちゃくなってます(爆) いわゆる『まい』になってます(核爆) ですが、舞と『まい』は分離してません(何) 舞が『まい』になっています(しつこい) 舞だけが子供に戻ったもんだと考えてください(死) ――――――――――――――――――――――――――――――――― 運命とはかくも残酷なモノだろうか……? 何故彼女がこうなったのか、それは誰にも判らない。 いや、正確に言うと理由に心当たりはあるのだが、怖くて聞けたモノじゃない。 何故って? 間違い無くオレンジ色の『邪(よこしま)な夢』が出てくるからだよ(涙) ……つまり何が言いたいかというと…… 「どうしたの? 祐一君っ♪」 こういう事なんだよ……(涙笑) 〜ミニ・ハッピー♪〜 事の発端は、一本の電話だった。 「はい、お電話代わりました。 相沢です」 『あ、祐一さんですか?』 「佐祐理さん? どうしたんですか、一体?」 電話の主は佐祐理さんだった。 『実はちょっと困った事になってしまって……』 電話の向こうから聞こえる佐祐理さんの声はかなり真剣そうだ。 「困った事?」 『そうなんです……とりあえず、私達の家に来てくださいませんか?』 「わ、判りました」 俺は受話器を置くと、すぐさま支度を済ませて家を出た。 佐祐理さんと舞が一緒に住んでいるアパートは、水瀬家からわりかし近いところにある。 2人が手ごろな物件を探していた時に、秋子さんが紹介してくれた所だからなのだが、そ れにしても、近い。 まぁ、舞と佐祐理さんに毎日でも逢いたい俺にとっては嬉しい事なのだが。 「舞ーっ! 佐祐理さーんっ!」 2人の住むアパートに着いた俺は、とりあえず部屋のドアをノックした。 あ、ちなみにまだこの2人との共同生活は実現してはいない。 俺の両親が秋子さんのような人だったら、即了承だったのだろうが、そこはそれ。 あっさりと却下されてしまい、俺は未だに水瀬家にお世話になっているのだ。 まぁ、高校さえ卒業してしまえばこっちのものなのだが…… もう計5年以上も高校生をしているのは気のせいなのだろうか? しかも、2年生を3年ぐらい続けているような気もするんだが…… 「あ、祐一さん、お待ちしていました」 そんなどうでもいいことを考えていると、佐祐理さんがドアを開けて出迎えてくれた。 「で、困った事ってなんなんですか?」 俺は中に入ると、率直に疑問をぶつけた。 「ええ、実は……」 「あーっ、祐一君だぁっ♪」 「うおっ!??」 佐祐理さんの台詞が途切れたかと思うと、突如、幼い女の子の声がした。 そして、一瞬遅れて下腹部に強烈な衝撃を覚える。 この感じは……いつぞやのあゆのタックル並だな…… 「って、お前……まさかっ!?」 「あはは〜、まい、だめですよぉ♪ 祐一さんが驚いてるじゃないですかぁ」 って、佐祐理さん、どうしてそんなに愉しそうなんですか? 舞がこんな姿になってるってのに!! 「だって、祐一君に逢えて嬉しいんだもん♪」 そう、今俺にタックルするようにして抱きついてきた少女。 それは紛れも無く、川澄舞だった。 まるで10年前のままのようなその幼さ。 そして、その明るさ。 ご丁寧に、耳にはあの時俺がプレゼントしたのと同じうさ耳バンドが着けられている。 「さ、佐祐理さん……困った事って、コレですか……?」 あまりに突然の事に、俺は困惑気味だった。 いや、それも当然の事だろう。 普通の感覚なら…… 「いえ、これでは無いんです」 「へ!?」 俺は思わず素っ頓狂な声を出してしまう。 「舞がこの姿になってしまったのは構わないんですが……」 いや、構わないってアンタ。 ちょいと冷静すぎやしませんか? 「だって、可愛いじゃないですか♪」 「可愛いって…… ! もしかして……また声に出してました? 俺……?」 佐祐理さんは頷く代わりにいつもと同じ最高の笑顔を返す。 ぐはっ……またか、またなのか…… 俺は心の中で嘆くと同時に、ワンパターンな作者を恨んだ。 (くそっ……後書きで覚えてろよ……(怒)) 「どうしたの? 祐一君っ♪」 まいは何も知らずに屈託の無い笑顔をこちらに向ける。 その笑顔は、まさしく10年前、麦畑で逢った頃の笑顔そのままだった。 「いや……なんでもない」 俺は力なく笑うと、まいの髪をくしゃくしゃと撫でてやった。 「あ……えへへっ♪」 まいは髪を撫でられたのが嬉しかったらしく、幸せ満載といった感じの笑顔をこちらに向けている。 「……で、困った事ってのは一体なんなんですか? 佐祐理さん」 「ええ、実はまいが祐一さんと一緒に居たいっていうんですよ」 佐祐理さんは全く困っていないような顔でそう言ってのけた。 「……へ?」 えっと、今のは俺の聞き違いか? ……そうだよな? 「……さ、佐祐理さん、もう一度説明してもらえますか?」 「ですから、まいが祐一さんと一緒に居たいって言うんですよ♪」 今度はご丁寧に語尾に音符を着けて言ってくれた。 ぬぅ……やはり聞き間違いなどではないようだ。 「もしかして……それだけなんですか?」 「はい♪」 出来れば否定して欲しかった。 もっとこう何ていうか、男手が必要な事とか……。 しかし、目の前に笑顔で立っている少女は見事なまでにそれを否定してくれた。 「私はこれから夕飯の買出しに行かなければならないので、まいのことお願いしますね〜♪」 佐祐理さんはそう言うと、あっさりと部屋を出て行ってしまった。 部屋に残されたのは、俺とちっちゃくなった、まいの2人。 「ねぇ、祐一くん、なにして遊ぶのっ?」 目の前でにこにこと笑っている少女は、本当に楽しそうにそんな事を聞いてくる。 しかし……どうしてコイツはこんなに嬉しそうなのだろうか? 「なぁ……まい?」 「えっ? なぁに、祐一君?」 まいは頭の上に音符がつきそうなくらい上機嫌でこちらを見る。 ……やはりわからない。 「……どうしてお前はそんなに楽しそうなんだ?」 俺の質問に、まいはさも当たり前のように答えた。 「祐一君と一緒にいれて嬉しいからだよっ♪」 「え……?」 俺は言葉を失っていた。 ―祐一君と一緒にいれて嬉しいからだよっ♪― あぁ、そうか。 まいは、ただ俺と一緒にいられる事が嬉しくて。 ただ、それだけでこんなにも笑っているのか。 考えてみれば無理も無い。 10年前、仕方が無かったとはいえ、俺は舞のもとから去っていった。 彼女にとって、ようやく巡り逢えた大切な人が去っていくのはどれだけ辛かったのだろうか? ずっと、独りぼっちで。 長い間孤独な時間を過ごしてきた彼女が、たかがこんなコトにも幸せを感じるのは当たり前じゃないか。 俺は、今まで一体彼女の何処を見ていたというのだろうか。 全く気が付いてやれなかった自分に腹が立った。 俺は……なんて馬鹿だったんだろうか…… 「……祐一君?」 ふと見ると、まいが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。 「あ、あぁ、悪い……どうした?」 「なんだか……祐一君元気が無いみたいだったから……」 「いや、考え事してただけだ。 ……心配かけちまったみたいだな、ゴメン」 先程と同じように、いや、さっきよりも優しく髪を撫でる。 「えへへ……」 まいは安心しきったような笑みを浮かべる。 「さ、何して遊ぶんだ、まい? 今日はトコトン付き合ってやるぞ」 「ホントに!! う〜んとねぇ……」 そうだ。 後悔は後から幾らでも出来る。 でも、それよりも、今はただ少女の願いを叶えよう。 ただ俺と共に居る事を望む1人の少女の願いを。 二度と裏切る事のないように。 ずっと、君のそばで――― 戻る